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私の関心  - 若松 茂三

難解な音階 - wakamatsuさんのブログ

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wakamatsu さんのブログ

 
2012
9月 14
(金)
17:17
難解な音階
本文

音楽のことで子供の頃から不思議に思っていたことがある。
それは、音階のことである。
ピアノなどではよく見かける白鍵と黒鍵の並びである。

よく知られているように、白鍵の間に黒鍵が割りこむように配置され、それが、2個続くとひとつ空いて3個続く。
これが繰り返される。
隣合わせが半音なら半音をなぜ均等に配列しないのだろうかと思ったものだ。
隣り合う白鍵同士がすべて全音ならそれも分かるが、白鍵も隣合わせが全音であったり、半音であったり、どうしてこうも不規則な配列をしなくてはならないのかと思った。

後日少しずつ分かったことがある。
和音として調和する音はよく用いられるので、これらの音を白鍵として7つ選び出し、残りを黒鍵としたということのようである。
確かにハ長調とイ短調だけは黒鍵のお世話にならずに済む。

ところが、これはより難解な次の疑問の出発点となった。
それは、音階と和音の関係である。
音階は、周波数が2倍になると1オクターブ上がるので、音程は周波数の比で決まる訳だ。
音程の半音は、等比で考えると2の1/12乗となる。
このように設定した音階もあって十二平均律という。
ところが、この数は厄介なことに無理数である。
この比で刻んだ音同士は、オクターブ単位の音程を除き常に無理数比になる。
一方、二つの音が和音として調和するのは周波数が整数比になった時に限る。
白鍵同士が和音で、オクターブが半音の音程の12倍(周波数比で12乗)になるということはあり得ないのである。
私の思考はそこで長い間止まっていた。

数年前に「絶対音感」という文庫本を読んで音階の音の定義を知ることができた。
それで音についての認識が変わった。

和音を重視して作られた音階がある。
三平方の定理で知られるピタゴラスが考案したピタゴラス音律がそのひとつである。
現在の西洋音楽の音階の基礎となっている。

周波数が3/2倍になる音を順次作っていくと、周波数比が単純な整数比だから調和する音が連鎖的に作られていく。
それらの音のオクターブ単位で高い、または低い音は調和するからこれらの音も含めると多彩な音がオクターブの中に出現する。

実はこの手順で音を作っていくと限りなく新しい音が生成される。
そこで、どこかで停止させ、そこで生成された音のセットをオクターブ毎にスライドさせて音階を作ることにするわけだ。

この原理を適用していくと完全5度(3/2倍  C−Gの音程)と完全4度(4/3倍  C−Fの音程)の和音は音程が調和的に維持されるがB−C と E−F の間は 256/243となり、これは人の耳には和音として響かない。
平均律では無理数でないと分割できないオクターブの音程を有理数で都合よく切り取っていって、最後に辻褄合わせに残りを半音にしたという訳だ。

全音の周波数比は 9/8となる。
半音の周波数比は256/243であるから、その2乗は1.109であり、9/8=1.125 より小さくなる。
一般に半音と言うが全音の半分より小さいのである。

従って、黒鍵の音を決める時には全音の音程を、半分より少し小さい「半音」と「残りの半音」に区分するか、新たな二つの半音を作るか、しなければならないことになる。
すると、少なくとも
狭い半音と、広い半音ができることになる。
ますます複雑になる。
もちろん黒鍵の両サイドの白鍵の音の相乗平均で決めたのでは、和音にはならない。

生成される音の順に基本音を順次ずらしていき、生成される音を追加していって黒鍵の音は決められるが、黒鍵の両サイドの音程が違う事態が避けられないことに変わりはない。

生成される音の順
F C G D A E B
に基本音を順次ずらしていき、生成される音のセットを注意深く眺めると興味深い仕掛けが見えてくる。
以下のようにひとつずつ黒鍵の数が増えていくのである。
主音と調子記号の数、調子記号のつく位置がこうしてきまるのである。

F C G D A E B
C G D A E B #F

G D A E B #F #C
D A E B #F #C #G
A E B #F #C #G #D
E B #F #C #G #D #A
B #F #C #G #D #A #E

逆に下の方向にも同様に♭で定義される。

F C G D A E B
♭B F C G D A E
♭E ♭B F C G D A
♭A ♭E ♭B F C G D
♭D ♭A ♭E ♭B F C G
♭G ♭D ♭A ♭E ♭B F C
♭C ♭G ♭D ♭A ♭E ♭B F

ところが、それぞれ広い半音が全音を切り取っていくので、結果として白鍵の間には、#で切り取った半音の切り口と♭で切り取った切り口の二つが存在し、中央の音を挟んで高い方に前者が、低い方に後者が存在することになる。
ピアノにはそれらの区別がないところをみると、区別をしていないか、あるいは、♯や♭の数が少ない調に制限すると定義が重複しないようにできるのでそのように定義しているのかもしれない。
イ長調で#Gが、変ホ長調で♭Aが登場するが、G音とA音の間の黒鍵はどちらで定義されているのか興味深い。

いずれにしても、半音の単位で整然と配列されていると思っていた音は、至る所で音程にムラがあるような、でこぼこの音階になっているということになる。

このような問題が顕在化するのは、移調の時である。
昔学校で習った時には移調するとメロディが変わると教わったが、平均律を前提に考えていた私には全く理解できなかった。
また、調子記号が複雑な理由も理解に苦しんだ。
それらの意味が40年以上を経た今になってようやく分かった。

ピタゴラス音階をベースにしつつ、しわ寄せをくった半音の問題を改善したいくつかの音階があるという。
純正律、中全音律などがそうらしい。
もちろん、トレードオフの関係にあるのでいいとこどりができる筈はないが、工夫されたものと思われる。

和音を追求すると、整数比を順次作り出して見つけることになるが、上述の方法は、数学的には、1,2,3の元が作る乗法群を母体にしていると言える。
これは、無限群を構成するが、それを有限の範囲で扱おうとするところに本質的な無理があると思われる。
とは言え、ピタゴラスの音階は、天才的な音楽家の耳を騙せるくらいの誤差で無理数を有理数に置き換えているのには、驚嘆する。

3の代わりに5や7を用いても同様に(ただし、音の組み合わせは異なる)音階を作ることができるが、ピタゴラスの音階ほどうまくはいかないらしい。
むらまつ小児科のweb 
ドレミの捉え方 には、これらの詳しい解説があり興味深い。

この音階の構成にはテトラコルドという概念が重要な役割を果たし、これを用いて解釈すると、より一般的に、日本の音階なども視野に入れて理論構成ができることを最近知ったが、もう少し知識を貯えてから、またの機会にこれらについては書くことにしよう。

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