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行きはよいよい帰りは怖い - wakamatsuさんのブログ
wakamatsu さんのブログ
日経BPのITPro は2月14日の 記事 で
ベリサインが新しい暗号アルゴリズム、ECC/DSAのSSL証明書の提供を開始
と伝えた。
従来のRSA(素因数分解による公開鍵暗号方式)に加えてECC(楕円曲線による公開鍵暗号方式)とDSA(離散対数による公開鍵暗号方式)を選択できるようにする。
公開鍵暗号の種類を増やした理由は、主にECCにおいてRSAよりも計算処理の負荷が軽くなること、である。
同じ鍵長であればRSAよりもECCの方が暗号強度が高くなる。
具体的には、現在主流のSSL証明書は鍵長2048ビットのRSAが一般的だが、3072ビット換算のRSAに相当する暗号強度をECCでは256ビット長で実現できるという。
技術の進歩によって、暗号解読の困難性とコンピュータ負荷のバランスが変化したため採られた措置と思われるが、新しい暗号方式の考案や、解読方法の発見、コンピュータの処理能力の向上などにより、今後も暗号の利用環境は変化していくであろう。
新しい暗号方式が考案されると知的好奇心が刺激される。
今後どのような暗号が考案されていくのだろうか。
暗号の技術には数学の難問が利用される。
RSAには素因数分解が利用されている。
7457×8923=66538811
は簡単に計算できるが、66538811の素因数分解、すなわちこれを積の形に
7457×8923
と表わすことは簡単にはできない。
7457という情報を伝えるときに代わりに66538811を伝えても8923という鍵となる数を知らなければ7453は簡単には解読できないわけである。
これと同様に、ある操作で情報を変化させ、その操作は簡単にできるがその逆は難しい、そういう操作を暗号に用いている。
今回利用されることとなった楕円暗号は、Fermatの最終定理の証明に使われた楕円曲線の性質を用いて、曲線上の有理点に群を定義し、その冪乗の逆算の困難性を用いている。
また、離散対数暗号は、有限群の冪乗の逆算の困難性を用いている。
ルービックキューブに挑戦された方はお分かりだと思うが、きれいに揃った状態から4,5回あちこちを回転させて問題を作ると、その10倍20倍くらいの手順ではなかなか元には戻せない。
もちろん、問題を作る時その手順を記録しておけばその逆の操作をすればよいのだから、簡単な解は存在するのだが、その知識が失われると一般的な解決法に頼らざるを得ない。
その手順は概して煩雑である。
この場合逆手順の知識が暗号解読の鍵に相当する。
海の中に設置しておいて魚を獲る定置網も、仕組みに似たところがある。

出典:IPA「教育用画像素材集サイト」 http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/
魚は行く手を遮られて、沖の方へ逃げると最初の網に入り、そこでまた行く手を遮られると脇の隙間から逃れるようにして次の網に入って行く。
魚は何の困難もなく網に入っていくが、出て行くことは容易ではない。
この網は逆方向に戻れないように閉じているという訳ではないから、、元来た道を戻ることはできるのであるが、どこから入ってきたのかわからなくなって、結局捕まってしまうのである。
行きはよいよい帰りは怖い、というわけである。
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